アルベルト・ニック、17歳。 叔父 オリハルコ・ニックの推薦により、城下町西冒険者ギルドの採用試験を受け、合格した。 職員見習いとして、適性審査官ミーナ・ルシティアのとなりで、冒険者になりたいとギルドを訪ねてくる人々の審査を行うことになった。 勤務初日に、申請を偽った人を早速みつけた。ギルド職員たちからは、スーパールーキーと呼ばれる存在となった。 三ヶ月、見習いとして窓口にはいって、書類審査を行った人数は150人。そのうち137人が冒険者となった。 全冒険者ギルドで、新人で適性審査官として窓口を担当して、登用三ヶ月で130人を超す冒険者を誕生させたものは、非常に少なく、べらぼう過ぎる活躍だった。 一応新人なので、ギルドの裏側でほかの職員が予備審査を別途で行ってはいたのだが、一切のミス、間違いもなかった。 本来半年以上見習いで過ごすのだが、上司であるエレーナ・リスターの判断により、三ヶ月で見習い期間満了とした。 おはようございます… 食堂に朝ごはんを食べにやってきた、まだ眠気まなこのアルベルト。 朝ごはんの用意をしながら、カウンター越しに… おはようさん、アル!いま用意してあげるから、もうちょい待っててな! ふぁーい…りがと…ござま…す。ぐぅ… 席についたものの、そのまま寝てしまった。 まーた、帰り遅かったのか、アルは… 宿主のラフォードは、アルベルトの疲れ具合を心配していた。 彼の活躍はこっそりギルマスから聞いていた。 なんでもアルベルトは観察力がすごいらしく… 「アルベルトは、冒険者申請にきた者と少し話をするんだよ。なんてことない、ただの雑談だ。その話をしているだけなのに、相手を知る、らしいのだ。そして偽りがあるときはそこで気がつくらしい。まあ…本人曰く、だからなぁ 俺にはわからん」 と言っていた。 最初聞いたときは、「たまたまじゃないのか」と思っていたのだが、先日、宿泊者とアルベルトが廊下ですれ違った際、少し話をしたらしく… 「ここの宿はふつうの宿泊客と下宿されてる方が泊まってるんですね。この城下町じゃめずらしいタイプの宿ですね」 「たしかに、下宿できる宿って、だいぶ少なくなりましたからね。最近の冒険者さんは、賃貸物件を借りられるかた、増えましたし…」 「そういえば、そうですね。ギルド報酬も安定して入手できる強さなら、ちょっとした家も借りれますね。この宿も見ていると結構、ランクの高そうな方出入りされてる感じですし…なかなかすごい宿だと思いますよ?」 その宿泊客に違和感を覚えたアルは、おれのところにきて… 「ラフォードさん、昨日からのあの宿泊客さん。盗賊かもしれません。」 「な?まさか。こんな宿に盗みにきたってのか?」 「はい。ここに下宿してる冒険者が高ランク冒険者だとみぬいてました。普通、そんな見分けがつくわけないじゃないですか。印がついてるわけもなく…」 「調べてきているってことか?」 「ええ。誰を狙っているのかはわかりませんが…」 アリアナ・ユスティナ、レーラ・アーヴィング、 ライル・ハーンベリン、食堂担当のレイカ。そして僕。 この五人がこのラフォードの宿に下宿している。 そのほかは、一般宿泊客になる。 城下町にある宿の中でも、宿泊料金もふつうの方だし…特出して目立つ宿でもない。 それなのに、高ランク冒険者が出入りしていることを知っているのはたしかにおかしい。 かなり出入りを調べておかないとわからない。 「たしかに…。ありがとう、アル。妹と警戒しておくよ。もしまた何か気づくことがあったら、また教えてくれよ」 アルベルトは、わかりました!といい、部屋に戻っていった。 「きいた通りだ、どう思う? 」 「…鋭いわねあの子。」 隠れて聞いていたのは、レーラ・アーヴィング。 「まあ、本人はそんな気いっさい持ってないだろうが…」 ラフォードは苦笑いする。 「で、どうされますか?ラフォードさん」 レーラは、いつでも動けます!といわんばかりの表情で、ラフォードを見ていた。 「ふむ…アルの指摘はおそらく間違いないだろう。賊の可能性が高い。あやつからは帰ってきたとき血の匂いがしたことが何度もある…」 「盗賊もしくは、アサシンの可能性もある…ということですね?」 「うむ…。本来なら我々で対処できればいいんだが…ここは、やはり専門家にまかせようと思う」 「そう…ですね。ここは捕縛依頼をギルドに出したほうがいいですね。」 二人はそういってすぐに冒険者ギルドを訪ね依頼した。 すると、ギルマス推薦で、現在捕縛依頼ナンバーワンの冒険者がラフォードの宿にやってきた。 どうも、ご主人。1泊宿泊したいんですが… なるべく動きやすい部屋をお願いしたいのですが… 「やあ、いらっしゃいローデニアさん。今帰りかい?」 「えぇ。今回はかなり大物でしたよ。まさか魔物が村の近くに、あんなに多く現れるなんて…たくさんの冒険者で引き受けて正解でしたよ」 ラフォードと情報交換している彼女の名は、 セリス・ローデニア。第二級冒険者で、捕縛依頼、もしくは討伐依頼を専門に受けている。西ギルドでも上位冒険者のひとりである。 「一階の奥の部屋をどうぞ。今日はほかの冒険者も泊まってますから…」 二人にしか聞こえないぐらい小さな声で… (ラフォード殿、調べた結果。重要指名手配犯、押し殺しのジャーク。盗み、殺しを数回。ギルドからは討伐、捕縛両方の指示がでています。) (やはり凶悪犯でしたか…申し訳ない…) ローデニアは鍵を預かり、部屋に向かった。 その日の夜。みんなが寝静まったころ… (この宿も余裕だな…) 深夜の誰もいない廊下を足音を立てず移動する人影があった。 2階のとある部屋の前で立ち止まった。 (材料集めに行ってるのは確認済、と。今日は殺しもせず、盗めそうだな…) 扉を自分の手製のツールを使ってあっさり開いた。 物音を出すことなく部屋に侵入した。 (さて、金目になるアイテムや材料は…っと) 。 慣れた手つきで物色する。鑑定スキルを持っているため、見つけるとすぐ収納袋に放り込んでいく。 すると突如声が聞こえてくる。 「押し込み強盗、殺人の罪により捕縛、もしくは討伐も可能と指示を受けた」 「なっ!?だ、だれだ!!」 強盗は、誰もいないはずの部屋をあわてながら見渡した。 すると、パチン!という音とともに部屋の電気がついた。 部屋が明るくなり、ドアの前に人が立っていた。 「な!?なんだきさま!!いつの間にそこに?」 強盗はすぐに剣をもち構えた。 「いつの間に!?って言われてもねぇ…。あなたが部屋に入ったとき、一緒に部屋に入ったんだけど?」 (ば、ばかな…この俺が、後ろにいたやつの気配に気づかなかった!?) 「まあ…なんでもいいですよ。あなたここで私に斬られるんですから」 「はっ!なめるなよお嬢さん。俺は普通の盗賊じゃねぇ、暗殺ギルドでも修行してんだよ。そう簡単に捕まるか!」 手慣れた手つきで短剣二刀で構えた。 「はぁ…抵抗しないでくれたら、怪我しないで済んだのに …残念です」 あっという間だった。セリス・ローデニアは、目にも留まらぬ速さで抜刀。盗賊の右手指を切り飛ばしていた。 「ぎゃあああああああああ」 盗賊は悲鳴をあげながら座り込む。 手から大量の出血をしていた。 「なぜ悲鳴をあげている?おまえはこれまで何人、人を殺してきた?今まで悲鳴をあげていた被害者たちを躊躇なく斬り捨てていただろう?」 「き、貴様…いったい何者だ!?」 「ん?あたし?あたしは、セリス。セリス・ローデニアよ!」 「…なるほど…騎士家を飛び出したお嬢さんか…」 盗賊は回復魔法で止血したあと、左手で剣をもった。 「へぇ…あたしの名前を聞いて騎士家ってわかるんだ。最近の盗賊は物知りねぇ…」 次の瞬間、セリスは盗賊の後ろに回り込み首元を蹴り飛ばした。 盗賊は吹っ飛び、床に転がって気絶した。 「あんたを斬り殺してもよかったんだけど…あんたには法の裁きを受けてもらうよ。」 セリスは、盗賊を縄で腕と足を固定した。 その後、連絡を受けた警備隊が駆けつけ、盗賊を捕縛。 セリスはすぐにラフォードに報酬を受け取ると… 「たしかに、報酬受取りました。ラフォードさん、あとはよろしく!」 「いきなり指名依頼すまなかったね。盗賊案件、それも凶悪犯となると…ギルドにだしてもなかなかすぐには受けてもらえないからねぇ」 「指名ありがたかったです。警備隊に事情聴かれる前に消えますね。ややこしいことになるので」 「ありがとう、ご苦労さま。そこは私から説明しておきますよ」 そのタイミングで、ライル・ハーンベリンが帰宅。 事情を知り、警備隊とともに王城へと向かった。 検証が終わったあと、ラフォードと宿の従業員たちは、ハーンベリンの部屋をかたづけた。 ……… 翌日 アルベルトは、いつも通りギルドに出勤した。 ギルドに入って… 「おはよーございまーす」 と、言いながら勤務表を書きに行こうとしたら、前に見知らぬ女性が立っていた。 「君が、アルベルト・ニックくんか?」 「は、はい…そうですけど」 軍の制服を着ているから、たぶん軍人さんだろうというのはわかった。 「貴殿に城に召還命令が出ていてね。迎えに参上した。」 「迎え…?え?」 軍人さんのとなりにたつエレーナ・リスターを見て助け舟を求めたのだが… 「あなた、なにをしたのかわかりませんが…きちんと話をしてきなさい」 と、言われ、困惑。 でもまあ、行くしかないのでアルベルトは軍人さんについていくことにした。 「はい…じゃあ…行ってきます」 僕、何をやらかしたんだろうか… そんな不安を抱えたまま彼女についていった。 とりあえず軍人さんの後ろをついていくと… 「おっと…そうだった。まだ名乗っていませんでしたね。初めまして、ニックくん。軍務部情報捜査官リサ・リリーサと申します。普段は国での犯罪や危険を及ぼす事態、またはその可能性がある事案に対して、適切な手段を講じる仕事をしています。よろしくおねがいします」 帽子をとってあいさつをした。美しい黒髪が風になびいてきれいだった。 「これはご丁寧に。どうも、ギルド職員のアルベルト・ニックです。」 僕は緊張しながら、リリーサさんのあとをついていくのだった。 業務日誌二章-1『いきなり盗賊って?』 書き物8 ~あとがき~ ギルド物語、第二章がはじまりました。ここからアルベルトの置かれる環境がちょっとずつ変わっていきます。 なぜ彼は、こう巻き込まれていくのか。ちょっとずつですがその変化とともに、彼自身も考えるようになっていきます。 どう変わっていくのか、どうか一緒に見守ってあげてください! 最後までお読みいただきまして、ありがとうございました! トップページへ戻る