書き物5:ギルド職員3




 
出勤初日。

窓口二番、冒険者登録に僕は見習いとしてミーナ・ルシティアの隣に座った。

窓口は全部で十か所。一番〜二番 冒険者登録(適正審査)、再発行手続き。

三番〜八番 クエスト受注・報告窓口。

九番 クエスト依頼窓口

十番 問い合わせ、違反報告窓口

あと入口そばに、受付がある。

受付係は三人。各窓口は基本一人が担当することになっている。

城下町西ギルドは、世界でも最大規模を誇る「東ギルド」に次ぐ規模のギルドで、ギルド職員は30人ぐらいいるらしい。

アルベルトは、ルシティアの隣に座り、彼女の働きぶりを見学する。

9時になると、始業の合図『あいさつ』が流れる。


『職員のみなさん!おはようございます。城下町西ギルド、本日も元気よく、バリバリクエストを冒険者たちに受けさせ、クリアさせよう!
安全第一!無理厳禁!復活契約忘れることなかれ!さあ、始業のお時間です。ハリシャキゴー!』

(安全第一、無理厳禁、復活契約忘れることなかれ!)の部分は全員復唱するのが決まりである。

始業の放送のあとに、始業のベルが響き渡る。
すると、次々に冒険者たちがギルドに入ってきて掲示板前へ急ぐ。

「さあ、始まったわよニックくん。すぐに申請来るよ?」

「はい、ルシティア先輩!よろしくお願いします!」

ニックは、目を輝かせていた。

(私もこんなころあったなぁ…なんだかなつかしい)

ニックのわくわくした表情に少し羨ましさを感じつつ、業務を始めた。

「冒険者申請お願いします。」

窓口に女性がさっそくやってきた。

「はい、書類の確認させていただきますね。椅子にかけておまちください。」

ルシティアは早速、提出された申請用紙を確認していく。
赤と黒の鉱石ペンでチェックするところに記しをつけていく。

……

5分後。

「はい、おまたせしました。◯◯村の……さん」

「はい!」

「特に申請用紙に記入漏れなどありません。加入条件等にも問題はありません。」

「あ、はい!ありがとうございます。」

「…ですが…。ここ。この部分です。」

ルシティアは、赤の鉱石ペンで印をつけた。

「(これまでに、傭兵もしくは暗殺ギルドに所属したことは一切ありません。)の、項目になぜあなたはチェックを入れておられるのですか?」

「えっ…?それってどういう…?」

女性は、不思議そうな表情をした。

「大変失礼ながら、あなたの手をさきほど確認させていただきました。あなたのその手のひらのダガーや短剣を握り続けたときにできる
特有のタコ。これから冒険者になろうかというのに、その年齢、若さでその熟練者のようなタコ…申し訳ないですが、疑わざるを得ません。
何しに来たの…?暗殺ギルドの密偵かしら?それとも任務?いまなら大事にはしません、素直にお帰りいただけるのなら。」

ルシティアは、窓口台の下では、左手に木製棒を持っている。

「見逃してくれないかしら、窓口のお姉さん。私暗殺ギルド抜けてこの街にたどり着いたのよ。なんとか冒険者になってやり直そうと思ってる。」

ルシティアは、密偵だと疑いにかかっていたのだが…
隣に座っていたニックがルシティアに合図した。

はっ!となったルシティアは、ニックを見た。
すると…

(ルシティアさん、この方、嘘はついていないようです。)

とメモに記していた。

ん〜…と言いながら少し考えた後…

「◯◯さん。あなたが本気でこの街で暮らして、ここのために働きたいとおっしゃるのなら…」

ルシティアは、棚から案内の紙をとりだした。

「ここにいってみてください。あなたの調査をして、オッケーが出たら、ここにまた来るか、兵士試験を受けることをおすすめします。」

「じ、事務センター…ですか?」

「えぇ、あなたの本当の適性を調べます。たとえ、暗殺ギルド抜けでも、なんとかしてくれるわ。」

「……わかったわ。行ってみます。」

冒険者候補はそう言って立ち上がったあと・・・となりに座るアルベルトの顔を見て・・・。

「ありがとう、お兄さん」
と小さな声で言って去っていった。

「ねぇ、ニックくん。さっきの子、どう思う?」

「はい…。おっしゃってたことに嘘はないと感じました。
でも、疑問なのがなぜわざわざ姿をさらすことになる冒険者ギルドなのか、ということですね。」

「たしかに、そうね。ギルドにいれば存在がバレやすい。
強ければなおさら。逃げてきた?らしいのにこの行動はたしかに怪しい。すぐに、事務センターに一報入れておくわね。」

ルシティアは、メモ用紙にすぐに書いて…

「タヤスケ!ちょっとこれ!」

「はいよー!」

タヤスケと呼ばれた男性職員が窓口にやってきた。

「これを事務センターに。ナルハヤヨロ。」

「了解でさ!あ、新人さん!どうもっす。よろしく!」

「ニックです。よろしくお願いします。」

アルベルトは立ち上がって一礼した。

返事してすぐ彼はあっという間に出ていった。

ターヤ・スケ。様々な事務仕事をこなすエキスパートらしい。
はじめて話した。

「あの子にまかせておけば、大丈夫。ちゃんと届けてくれるから。」

「なるほど、了解です。」

そのあと、二人目の男性は難なく申請を終えた。
「明朝、冒険者認定証が発行できます。必ず取りに来てください。」

「あ、あ!ありがとうございました!

椅子をきちんと元に戻し、男性は去っていった。

「今の方、かなり体、鍛錬されてましたね」

「えぇ。先日まで農家だったとか。彼の村は近年、獣系魔物による農作物被害が多いらしくてね。
冒険者になって、自分の村を守るのが彼らの目的らしいわ。」

「あなたの村のように自衛するには、国の許可がいるからね。兵士を鍛えるのも大変だし…
冒険者に依頼を出して討伐してもらったほうが守りやすいからね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして…アルベルトにとって、運命の出会いともいえるかもしれない人物が現れた。

「あの…よろしくお願いします。」

青い髪がスラッと長い。少し照れながら女の子は座った。

「拝見しますね。」

ルシティアは、申請書を確認した。
アルベルトにもう一枚の申請書を渡して確認を頼んだ。

(ニーナ・エルチャード、17歳。魔法学校卒…)

記入漏れがないか確認していくアルベルト。

(ん…?)

ルシティアが確認の手を止めた。

「ごめんなさい、エルチャードさん。あなた、冒険者になること、ご家族さんに許可を得ているかしら?」

「えっ?あ、は、はい。ちゃんと得てますけど?」

「そう…?」

ルシティアは、返事したが隣のアルベルトは、反応が違った。

(おそらく勝手に申し込んでいますね。焦りの気持ちが見えました)

彼女には聞こえないぐらいの小さな声でルシティアに伝えた。

一通り2人は確認を終えた。

そして、ルシティアは、テーブル下にある3つあるボタンのひとつをそっと押しておいた。

二人は確認し合ってから、ルシティアは報告する。

「エルチャードさん、申し訳ありません。あなたの申請受け取ることはできません。」

「なっ…!?ど、どうしてですか?なにか不備とかありましたか?」

「いえ、不備とか、そういう問題ではありません。エルチャードさん。あなた、偽っておられますよね?」

!?

ルシティアの言葉に顔色が変わった。

そして…

「エルチャード殿。」

彼女の後ろから男性の声がした。

「ギルドマスター!?」

アルベルトは少し声がうわずった。

「失礼。エルチャード殿、少し別室でお話を伺ってもよろしいかな?」

「………はい。わかり、ました。」

ギルマスのあとを彼女はついていく。

「こういう機会はあまりない…いや、まあないのだが…ニック。君も同席しなさい。ルシティアはそのまま業務を。」

「はい、ギルドマスター。」
「ニックくん。ギルマスの邪魔をしてはだめよ。見ているだけ、ね。」
「了解しました。」

アルベルトは先に移動した2人を追った。

ギルドマスター室についたので、ノックして確認してから入室した。

応接用のソファに座っているさっきの女の子と、向かい側に困った表情を浮かべながら座るギルドマスター。

「それで…エルチャードなんて名乗られて…バレるとは思わなかったのですか?」
「まあ、いまどきこの名を聞いてピンと来る方なんて、魔物群生時代を戦われてきたあなた様ぐらいですよ。この街で。」

静かに紅茶を飲みながら話すエルチャード。
一切動揺してない。それどころか、さっきまでとは別人かと思わせる態度だ。

「ニックくん。君を立ち会わせのは、君にも少し関係があるからなんだ。」

「ぼ、僕がですか!?」

はて…どういう意味だろうか?見当もつかなかった。

「エルチャード…さん。同席させた彼は当ギルド入りたての期待の新人。アルベルト・ニックくんです。」

「ニックですって…?まさか、あの…オリハルコ・ニック・・・?」

「僕、オリハルコ・ニックの甥ですけど…」

ニックは、おそるおそる名乗ると、彼女の目は輝いた。

「うっそ!?まじ!やばーい!ニックおじさまの血縁の方に会えるなんて!?」

「お、おじをご存知なんですか?(おじさまって??)」

「ええ、もちろんです。自己紹介、遅れましたね。」

エルチャードが名乗る前に、ギルドマスターは立ち上がった。

「わたくし、ニーナ・エル・ラシュフォードと申します。お見知り置きを。」

ニーナは、美しい所作の礼をした。

「これはご丁寧に。って!?ラシュフォードって!?」

「ニックくん。こちらの御方はな、このギルドの先にあるお城…。
ラシュフォード城の城主、バロン・ラシュフォード7世様の御息女である。」

アルベルトはすぐに床にひざをついて頭を下げた。

「ご無礼致しました。どうか、ご容赦を…」

「なーに気にしなくても大丈夫ですよ。わたくし、すでに継承権を失っている身です。
一応貴族ではありますが、エルの名をいただき、分家として興したんです。でも興したものの、何かをしなくてはならない!
…ということもなく、暇で…じゃなかった!何か今まで出来なかったことをやってみたいと思いまして。」

(今、暇でっていったなぁ…)

ギルマスとアルベルトは心の中で同じことを考えていた。

「先月から、お世話係と一緒に城を出て、城下町で住みまして…」

(ギルドマスター、お姫様が住める家なんて、この街にありましたっけ…?)

アルベルトは、小さな声でたずねた。

(あるわけなかろう。だから事前にバロン・ラシュフォード様が彼女の邸宅を建てておられた。)

(あぁ…やっぱり(汗))

はぁ、とため息をついたアルベルト。

そして…

「そこで。ネマヨーテ殿、ひとつお願いがあるのですが?」

「はっ。ギルドマスターたるわたしめにできることあれば…」

「わたくしを専属冒険者認定してもらえませんか?」

ニーナの予想もしないお願いに言葉を飲むギルマス。

「専属冒険者、ですか…。」

(そうきたか…)

「ギルドマスター、専属冒険者認定ってなんですか?いただいたマニュアルには載ってなかったのですが…」

「あぁ…そうか。あれには書いてなかったな。」

「それはな…」

※専属冒険者認定とは?

各ギルドは、それぞれでクエスト・依頼を出して、冒険者にうけてもらう。
クエストを受けることに関しては条件はなく、他国の冒険者でも受けることが可能である。
しかし、唯一受けることができないものが、「専属冒険者クエスト」である。
本来冒険者は、一カ所の街に留まることはあまり多くはない。だから、その街に留まってほしい冒険者を自ギルド専属冒険者として雇うことができる制度である。専属冒険者に認定されたものは、クエスト受注優先権や、発注前のクエストも閲覧することが許されている。
また専属のため給与もある程度出る。そして最大のメリットは、報酬がめちゃくちゃ多い、
「専属冒険者クエスト」を受けることができる。
ちなみに専属冒険者はギルド内に専用の待機室があり、そこには職員が待機していて、ギルド内業務をすべて行ってくれる。
その部屋にだけ通常のクエスト板だけじゃなくて、専属クエスト板が設置されている。
ただしデメリットもあり、専属冒険者と認定されたギルドしかクエストは受けられない(国もしくは危機的な状況下における依頼を除く)。
さらに、専属冒険者になったからには、ギルドにおける情報守秘義務もある。もし故意に情報を漏洩させた場合、厳しいペナルティが科される。
悪質な場合、自身に対する捕縛依頼がクエスト発注されることがある。

……

ギルドマスターから、専属冒険者について詳しく説明を受けた。ニーナも静かにその説明を聞いていた。

「ニーナさまはこの制度、ご理解されておられますか?
当ギルドの専属冒険者となられたら、ここではもう貴族としては扱ってはもらえませんよ?
ギルドの命令によって、あなた様は、厳しい依頼だって受けなくちゃいけないかもしれないのですよ?」

「もちろん承知しております。しかし、わたくし・・・いえ、私としても、今の立場のまま過ごすのは非常に危ういのです。
少しお話長くなりますがよろしいでしょうか?ギルドマスター。そして、新人さん?」

「大丈夫です。リックくんは?」
「は、はい!」

「ありがとうございます。では…
ご存知の通り、我がラシュフォード家は、後継者問題の最中。私という存在は兄や姉にとって、邪魔な存在だったのです。
だから私は父上に申し出て、分家として出たのです。」

ラシュフォード三兄弟。

長女
アイーナ・ラシュフォード(22)
長男
レイナード・ラシュフォード(26)

そして、ニーナ・エル・ラシュフォード(17)

「姉アイーナと兄レイナードは、どちらも当主になるための教育を受けています。年功序列でも性別でも選ばない。なるための資質のみ。
現当主、バロン・ラシュフォード7世は、すでに家督を譲り引退することを決めていました。
様々な観点から選ぶことになっており、すでに選考を始めて二年が過ぎています。
そろそろ選ばれるであろう、という段階で…」

「父バロンは、あろうことか、後継を指名しない、と発表したのです。」

「なぜか、と父に尋ねたら…私はそなたたちが幼い頃いったはずじゃ。なれるものが自ずとなる、と。
戦い以外で正々堂々。まっすぐに進むものが現れることを期待しておる。」

「この話を聞いて、私は候補から降りました。父も気づいておられたのでしょう。
私が冒険者にあこがれていることを。」

「幼い頃、兄と姉は、魔物に連れ去られました。交渉にあたった父に彼ら魔物はこの街の支配権をよこすように要求したそうです。
当時、まだ兵力もそれほど高くないころで、真正面から戦うことは、非常に危険でした。
父は一部地域の譲渡も考えていたそうです。しかし、ある方が父に冒険者ギルドを紹介したらしいんです。
まだこの街のギルドはそれほど発達していたわけではありません。
当時、領地としてのこの城と街でしたが…交易がさかんで、国家へと発展する時代でした。
まだまだ発展途上ではありましたが、次々に新兵も入隊し、領地の防衛もより強固になっていきました。
しかし…まだまだ魔物や比較的弱い敵の侵入が多いころでもありました。そんな中で兄と姉が連れ去られる事件が起こりました。
父は教わった通り、冒険者ギルドに2人の救出を依頼しました。
当時のギルドマスターは、依頼を初のギルドの最重要クエストとして冒険者たちに依頼。所属したほとんどの冒険者が、
パーティを組み、救出にむかいました。
1週間にわたる戦いの末、二人は救出されました。魔物たちのリーダーを新進気鋭のパーティが討ち取りました。
まだパーティを組んで間もない彼らでしたが、本当に強かった。
そんな彼らの話を父に教わってから、私は彼らにあこがれました。幼いながら、彼らの話をいろんな方から教わりました。
さまざまなクエストをこなし、彼らの活躍がたくさんの冒険者を集め、ほんの数年でギルドは目覚ましい発展を遂げました。
彼らへの憧れは、私自身の進む道も示してくれました。魔族との決戦を最後に解散してしまいましたが…彼らのような冒険者になりたい、
その想いは強く、こうしてここにきたわけです。」

「なるほど…ニーナさまの冒険者になりたいという気持ち、十二分に理解しました。」

ギルドマスターは、目を閉じ、納得したように数度、頷いた。そして…


ニーナさま。当ギルドは、冒険者となることを認めることはできません。


業務記録No.03『運命の出会い』
 
書き物5 ~あとがき~

ついにギルド職員としてスタートを切ったアルベルト・ニック。初日は先輩であるルシティアの隣に座って、業務内容を覚えつつ、
なれていくことになりましたが、いきなりアクシデントという展開となりました。題名にあるように「運命の出会い」となる相手がやってきます。
今後、アルベルトと彼女・・・ニーナとの関係はどうなるのか、気になりますが・・・本日はここまで!また次回お楽しみくださいませ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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